株式会社ナウハウス
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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
ナウハウス一級建築士の高橋です。設計を通して感じたことや現場の進捗を気軽に綴っていきたいと思います。

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あおによし奈良の都―建築の第一義
2006-11-30
 建築家大会が奈良で開催されることになり、晩秋の大和路を訪ねました。名古屋から近鉄特急で向かいますと、奈良に近づくにつれて重厚な本造りの住宅やむくりのある屋根が多くなって来ることに気が付きます。奈良はまさに秋、会場近くの奈良公園はナンキンハゼ、カエデ、イチョウが鮮やかに紅葉していました。「建築家大会2006」として、デザインフォーラム、新人賞審査会、数々の講演会、レセプションパーティーが三日間にわたってここで開かれるのです。
 奈良市内にはいたるところに朽ちかけた土塀があって、歴史の古さを感じさせます。早朝、昔町の奈良町から福智院を巡って東大寺に向かいました。一番のお目当ては南大門です。1199年に重源によって天竺様で再建された5間3戸の二重門です。貫(ぬき)構造の単純明快で合理的な構法で、この構造の簡素さがそのまま力強い表現となって門のデザインがされています。シャッターを切りながら近づいて行きますと、深い庇に支配された空間がいつのまにか私を包んでいることに気付きます。南大門は構造物としての門を風雨から守るため、床面積の三倍もの屋根が門を覆っています。日本建築はこの深い庇を支えるための工夫の結果によるデザインです。木構造のため、肘木や斗栱が発明されました。南大門はにザックリと作られているのに、風雪に耐えているばかりでなく、合理的で明快なデザインが感動を与え続けていることに驚かされるのです。つねづね思っていることですが、この南大門のように、「ザックリ作って風雪に耐える構造物」であることが、建築の第一義ではないのかという気がするのです。建築の目的によってさまざまな工夫が加えられ、デザインの展開がなされるわけですが、建築のいちばん大切なことは、構造物として風雪に耐えることだと思うのです。南大門に毎日通いました。そのたびにいい気分になり、ますますその確信を深めました。
 南大門を見た後、大仏殿を見て法華堂に向かいました。この本堂は奈良時代に建てられたもので、鎌倉時代にやはり重源によって増築された礼堂とを繋げた「増築建築」の傑作です。中学の美術史でこの法華堂を初めて見て、建築の妙を知っているわけでもないのに、寄棟と入母屋を繋げたビミョウな造形にえらく感心したことを思い出します。感性というものは、三つ子の魂百までというように、年齢によって変わるものではなく、いつまでも心を震わせることを再確認しました。
 次に正倉院に向かいました。日も落ち始め、逆光の中に校倉造りの宝庫が浮かんでいました。2.7mの高床と重厚な屋根は貴重な宝物を収蔵して千数百年の風雪に耐えたいかにも奈良時代の建築です。警察官の警備がやけに厳重であったのは宮内庁の管轄だからでしょうか。
 西に向かって転害門(てがいもん)に向かいました。この門も平家の焼き討ちをまぬがれたもので、天平の雄渾な様式を今日に伝えています。私の目的はこの門ではなく、この周辺で鎌倉時代中期に栄えた東大寺ゆかりの刀工集団の手掻派(てがいは)の鍛冶場のあった周辺を探策することでした。6000人もの僧兵の刀剣を鍛えた大和鍛冶は南朝方ということで、時代の変遷にしたがい悲運の道をたどりました。刀剣の鑑定では、大和伝の日本刀は鎬幅が大きく、鎬高も高く造り込みが頑丈で、刃文も湾れあるいは小乱れといった素朴でおおらかなものです。日本刀においても東大寺南大門と共通する、初源的で素朴といった大和気質を大いに感じるのです。京都の山城伝の刀剣の洗練された品格とは対照的です。奈良は「何か懐かしく,滅びゆくもの」として感じるのは「時代についていけない、あるいは時代について行きたくない」といった思想を認めたい気持ちが私のどこかにあるからでしょう。
 転害門の周辺を散策した後、しばらく西に向かって奈良の家並みの中を歩きました。そしてホテルのある南へ方向を変えて行きますと、コンクリート打ち放しでタイルやジグザグの手すりの付いた、いわゆるデザイナーズマンションを見つけました。空き家もあるのか閑散として生彩を欠いていました。10年くらいしか経っていないと思われるのに、やつれかたがひどい。こういう建築が一般の人たちにデザインの意味を誤解させているのだと思います。表面の造形がデザインだと勘違いしている、設計者がはしゃぎすぎた建築は風化が速いものです。敷地の特性に適合し、デッサンのしっかりした建築は実際の風雪に耐え、コスト対策にも有効なのです。「東大寺南大門のように」とは言いませんが、「風雪に耐えること」が建築の第一義だと思うのです。できれば「ザックリ作っているのに隙がない]なら、よりいいと思います。使い勝手の良さはデザインと共存できるもので、深く掘り下げられた設計ならば、自由をかなりの範囲で使い手に提供してくれるはずです。
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