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ナウハウス所長の鈴木です。今何を感じ、どのように建築に向き合っているのかを伝えていければと思います。
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虎徹と清麿
2006-09-01
三島の佐野美術館で「虎徹と清麿」の特別展があり、はやる気持ちを抑えきれず、朝早くから出かけて参りました。開館から閉館まで、どっぷりと虎徹(コテツ)と清麿(キヨマロ)の世界に浸かり、いろいろなことを考えさせられました。
 虎徹は江戸時代の初期の人で、文化を享受する平和な時代になって、需要の無くなった甲冑師から刀工に50歳で転じた人です。甲冑師ならではの鉄を鍛える技を駆使し、古来の名刀を研究し独創を加えて、当代随一の名工になりました。対して清麿は江戸末期、黒船来航により日本刀の需要が高まった時代に、若くして天才的な才能を発揮し、四谷正宗と呼ばれるほどの名工になりますが、42歳という若さで自刃しました。虎徹と清麿は、日本刀が実用から離れ、再び実用に転じる江戸時代に咲いた二つの華です。
 虎徹は鎌倉時代の正宗の弟子の義弘(ヨシヒロ)に私淑し、明るく冴えた地鉄(ジガネ)に、沸(ニエ)が輝く数珠刃(ジュズバ)の刃文を焼きました。一方、清麿は左文字(サモジ)を理想とし、沸(ニエ)本位の躍動的な刃文を焼きました。どちらも作刀期間は20年程度です。気合の入ったモノつくりの旬は20年間が限度といったところかもしれません。 
 虎徹と清麿の最も大きな違いは、時代背景も異なりますが、作為に対する意識の違いだと思います。清麿が臆面もなくストレートにデザインの意図を出しているのに対し、虎徹には表現を出しすぎず、作為を抑えて自然でありたいと思っているふしがあります。
 清麿は18歳から刀を打ち始め、虎徹は50歳からのスタートでした。清麿が兄真雄(マサオ)や窪田清音(クボタスガネ)というよき師を得て、じっくりと作刀に打ち込むことができたのに対して、虎徹は50歳からの甲冑師から刀工への転職で、その気持ちはなみの決意ではなかったことは想像できます。
 それは営業意識においても影響を与えていると思います。虎徹は出来上がった刀を山野加右衛門に試し切りをさせ、貳ツ胴切落などの載断銘を入れ、刀の切れ味をおおいにアピールしています。しかし清麿は刀の姿や刃文、地景(チケイ)といった焼き刃の働きのダイナミックな躍動感をそのまま表現すること、で作品の魅力をアピールしています。清麿の刀の載断銘はごくわずかです。虎徹にも充分作為を窺うことはできるのですが、清麿ほどにはデザインの意図を直截には出せなかったのだと思います。
 虎徹と清麿の違いは最後には資質の違いにいきつきます。それはそれぞれの名前の中にはっきりと現れている気がいたします。あとから自分で選んだ名前には、美意識や信念や理想といったものが反映されているはずです。「虎徹」名には武運をひたすら祈るといった気持ちを感じる一方、「清麿」名にはよりビジュアルで気位の高さ、いちずな若さといったものを感じます。 
 面白いことに、虎徹は柄(ツカ)を抜いたときの中心(ナカゴ)の目釘穴まで凝っています。瓢箪形をした化粧孔や目釘穴の数によって古色を感じさせる効果なども考えていることなど、建築設計にも通じるしかけ(作為)を連想させて面白く思いました。重要文化財の虎徹は地刃が冴え冴えとし、沸(ニエ)がフワッと柔らかくなんともいえない美しさで、これぞ虎徹だといえるものでした。
 刀の鑑定は実際に使って試すわけではありません。ひたすら見ることによって、良し悪しを見抜くのです。[斬れる]ということを[斬れそうだ]という範囲まで広げて考えると、選択の範囲は一気に広がります。伝統とか経験の蓄積のすごいところは、「掟」を会得すると、見るだけで良し悪しを判断できるところにあります。いい肉屋さんや魚屋さんは見るだけでいいものかどうかを見極めます。ときどきつまむのは確認だけなのです。しかし簡単に試せるものはいいのですが、確認することで失われてしまうことになることも多いのです。
 人にはひとつのことを集中して見続けていると、いつのまにか見えてくるものがあります。人間の眼の進化には驚くほどの可能性があると思います。見るだけで分かるということを「鑑定」といいます。
 見ることで分かるということを建築にも応用すれば、見ること(考えること)で、建築は住む前にさらに建設する前に、住みやすそうだとかいい建築になりそうだということが分かるはずです。イメージや設計の段階でいい建築になるかどうかを見極めるのが建築家の本領です。虎徹と清麿はいずれ劣らぬ才能で,それぞれの個性を発揮し、理想の刀のイメージを明確に持ち、伝統や自分自身の経験の蓄積によってほれぼれする名刀を残しました。
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